・・・意見する者なく、店は女房まかせ、これを助けて働く者はお絹お常とて一人は主人の姪、一人は女房の姪、お絹はやせ形の年上、お常は丸く肥りて色白く、都ならば看板娘の役なれどこの二人は衣装にも振りにも頓着なく、糯米を磨ぐことから小豆を煮ること餅を舂く・・・ 国木田独歩 「置土産」
・・・ 内地米と外米の五分五分の混合、あるいは六分四分の混合に平麦を加えるとどうもばらつきようがひどいので糯米を二分ほど加えてみた。 平麦のかわりに丸麦を二度たきとして、ねりつぶしてねばりをつけた。 黄粉をまぶして食ってみた。 数・・・ 黒島伝治 「外米と農民」
・・・すると家々ではかねて玄関かその次の間に用意してある糯米やうるちやあずきや切り餅を少量ずつめいめいの持っている袋に入れてやる。みんなありがとうともなんとも言わずにそれをもらって次の家へと回って行くのである。 平生は行ったこともない敷居の高・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・道明寺の餡入り餅であったがその外側に糯米のふかした粒がぽつぽつと並べて植え付けてあった。ちょうど栗のいがのようだと言うので「いが餅」と名づけたものらしい。「カエチョウ」の意味は自分にはわからない。このはかない行商の一人に頭蓋骨の異常に大きな・・・ 寺田寅彦 「物売りの声」
出典:青空文庫