・・・丁度素晴らしい「トラクター」や「コンバイン」をつかって麦の収穫を終ったばかりのところである。ドイツからの労働者見学団の若い男女たちは、その収穫の壮大な仕事ぶりを見てきたばかりなので、片言のロシア語やあやしげな英語でさかんにその見事な様子につ・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・何か、この先もう一つ、吹っきれば素晴らしいのが見えて居るのに、いさぎよくそこまで踏切ってなぜ呉れないか、と云う愛の変形であったのだ。 何かで「忘れ得ぬ人々」? と云う題で書かれた感想に類したものを見て自分の感じたことも同じだ。 最近・・・ 宮本百合子 「有島武郎の死によせて」
・・・とか「素晴らしい者」とか感歎詞を連発する。インガは、もう何十度か、そういうことはやめて呉れと云わなければならなかった。 インガは自身がインテリゲンツィアであるだけ、ニェムツェウィッチを愛せない。彼の中には古いセンチメンタルしかない。・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・ところが、どうしたのか前の方の形は実に素晴らしいのに、後で見ると、踵がまるで曲って内側に減り込んでいる。形が、子供の運動には余り不適当なので、あんなに歪んでしまったのだろう。それ故、歩くのが平らかに行かない。どうしても、きく、きく、と足が捩・・・ 宮本百合子 「思い出すかずかず」
・・・この高貴な人がらをもつ父に贈った。或る人はいっている。カールは、三人の「聖者」をもっていた。彼の父、彼の母、そして彼の妻と。この素晴らしい父は、一八三八年、カールが二十歳の時に腎臓病のためにトリエルで死んだ。 母のアンリエットは、オラン・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・一緒に店先で見たときはそれほどとも思わなかったのに、家へ運ばれて来て、天井の低い茶室づくりの六畳の座敷へ入れられたら、大きいし、黒光りで立派だし、二本の蝋燭たてにともった灯かげに燦く銀色の装飾やキイは素晴らしいし、十一ばかりであった私は夢中・・・ 宮本百合子 「きのうときょう」
・・・女学校をずっと二人で通えたら、それは素晴らしいことだ。由子は勿論お千代ちゃんは容易く試験を通るとその学力を信頼していた。そうでもなければ、市長からわざわざ御褒美を貰い、新聞で紡績の装を褒められたとて何になろう。 然し、お千代ちゃんを助け・・・ 宮本百合子 「毛の指環」
・・・私は、此一生をお前の 愛に捧げよう、我生をその愛に献じ魂をこめて生命を伝えたら生存が お前の奥に埋もれ切った時お前らは 私の囲りで 素晴らしいモニュメントともなるだろう。ひとは 只一ひらの紙を見る。然・・・ 宮本百合子 「五月の空」
・・・これも、ソヴェト五ヵ年計画の素晴らしい成果の一つである。美しい郵電省の先に、少年図書販売店がある。入って見ると、ある、ある! 色彩も美しい五ヵ年計画の絵解きから、十月革命の相当のむずかしい歴史に至るまで小学校の学年順に並べた棚が出来ている。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・よく解ったとはいえないけれども、よほど素晴らしいもののように思う。しかし自分たちが敬服したのは、その哲学よりも一層その人物に対してである。哲学者などといえばとかく人生のことに迂遠な、小難かしい理屈ばかり言っている人のように思われるが、先生は・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫