・・・けれども、少くともわたしは、報告者をあのように細心に努力させているそのことが「勤労者文学」の柵がせまくるしくなって来ていることを語っているという感銘をうけた。視点を前方につけつつ、爪先は細心に足もとをふみわけようとされている。そこに、何とな・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・のはずみに間違えて平民の社会に天降った侯爵令嬢良子が、つつがなく再び天上したからには、総てはあの時ぎりの白日夢とし、東郷侯爵家というもののまわりは又〔七字伏字〕閉ざされたかの如き感じを世間が持つよう、細心な努力が払われている。 湯浅宮相・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・しかし、理論家にとっては一篇の作品を細心に吟味することで、プロレタリア文学として次の発展段階へ、しかじかにありたい、という要望をひき出すことが可能である。作家が、その要望を自身のものとして実感したとしても、作品の現実でそれを具体化することは・・・ 宮本百合子 「両輪」
出典:青空文庫