・・・すべての婦人がほんとうに自分たちのために、ほんとうに自分たちの未来の幸福のために、生活の細目にわたって充分理解し社会との関係を掴み、そこで発展的に問題を解決してゆく鍵を見出す本気の心持がわいてきていると思います。 自覚というようなことは・・・ 宮本百合子 「自覚について」
・・・しての価値は、私という主人公が勤労生活のうちにあるさまざまの半封建的な、搾取的な細部を感じつつ生きてゆくそのことを、いわゆる、進歩的勤労者の自覚した認識というような観念にてらして描きださず、生きてゆく細目そのもので描きだしているという点です・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・ 外にたったまんま篤は云って扉を細目にあけた。 京子の方を見てポックリ頭を下げて千世子の方に目を向けてたしかめる様にも一度、「ねいいでしょう。と云った。 千世子はだまってがっくんをした。 京子は間のわるそ・・・ 宮本百合子 「千世子(三)」
・・・と声をかけると声のやさしい女は細目にあけて黛を一寸のぞかせて、「ようこそ、どうぞ御入りあそばして」と云ってすぐ几帳を引いてしまった。「よく来て下さったこと、今に兄君も常盤の君も紫の君も見えるでしょうからね」とうれしそうに・・・ 宮本百合子 「錦木」
・・・そのような文学の細目が、しだいに日本の文学史を変革してゆくであろう。〔一九五〇年三月〕 宮本百合子 「文学と生活」
・・・しかし、この十数年間の民衆の実生活は全般にわたって、その細目に及ぶまで余り切りつまり、自由を失い、発言の力がなかったから、ましてやラジオなどについては、日本のラジオは、こういうものとしてうけ入れていたように思う。もしかしたら、「日本のラジオ・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
・・・金銭出納細目帳のようにまで書かれている。 徳川の政府はたびたび贅沢禁止の命令を発したが、命令は実行されなかった。それは当然であったと思う。社会的に最も身分の低いものとされ、斬り捨て御免の立場に置かれ、しかも経済の中枢では権力者の咽喉元を・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・さて真っ先に玄関に進んでみると、正面の板戸が細目にあけてある。数馬がその戸に手をかけようとすると、島徳右衛門が押し隔てて、詞せわしくささやいた。「お待ちなさりませ。殿は今日の総大将じゃ。それがしがお先をいたします」 徳右衛門は戸をが・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫