・・・たまたま時間を写すものありとも、そは現在と一様なる事情の過去または未来に継続するに過ぎず。ここに例外とすべき蕪村の句二首あり。御手討の夫婦なりしを更衣打ちはたす梵論つれだちて夏野かな 前者は過去のある人事を叙し、後者は未・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・第一に手がかじかんで、私のこの一ヵ月継続中の風邪のもとは、つい炭が途切れかかったときの記念です。 それにつれて、昔芥川龍之介の書いていた支那游記のなかのことを思い出します。或る支那の文人に会いに行ったら、紫檀の高い椅子卓子、聯が懸けられ・・・ 宮本百合子 「裏毛皮は無し」
・・・私たちの生活の刻々が意識するしないにかかわらず判断の継続、累積であり、そこにこそ「時間は人間成長のための枠である」という意味ふかい表現の真実がこめられている。 今日のものを考え自分を考えて生きようとしている真面目な若い女のひとたちは、自・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・そのために一ヵ月余、継続的に仕事をした。ある部分は数度かき直された。そして「乳房」と題をつけられ、中央公論四月号にけいさいされた。 この期間、「乳房」を集注して書き終えたのは好機であった。なぜなら、わたしは、その五月十何日であったかに前・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・ 中野さんが全力をつくして対象に引組むことでそういう部分を内面的にも発展させ切ってしまうための本気な努力を益々継続することを心から期待してやまない。 これらは作家の発展の途についての感想であるが、私はこの作品を読んで更にもう一つのこ・・・ 宮本百合子 「鼓舞さるべき仕事」
・・・それにもかかわらず、たとえば、文学者懇談会は、継続されなかった。なぜあれは、もちつづけてゆけなかったのだろうか。 いわゆる肉体小説、風俗小説の作者から、共産党員である作家・批評家までを包括して持たれる懇談会は、ただそれらの各種の人たちが・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・温和で正直で忍従的な人民の多数が、その温和で生産的な社会生活を継続し発展させてゆく可能を保つために、それらの人々がファシズムにくわれつくさずに生きてゆけるだけの自主的余地をこの社会に拡げる力として、日本のレフティストの存在意義は小さくないこ・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・しかし個々の意識人の人生において、経験は蓄積されなければならず、批判・発展が継続してされなければならず、その結果としての閲歴がもたれなければならない。社会の歴史にも同じことが必要である。感性的にだけ生きた人にとって生存はあったが、生活と人生・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ これから数十回継続されてゆく立証段階で、よび出される百二、三十人の証人と、林弁護人の弁論中にあらわにされた検事団の偽証罪をかざした証人操作法とは、どのようにからみ合い、どのような情景を法廷にくりひろげてゆくだろうか。世論が公正に監視を・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・そんな風に穿鑿をすると同時に、老伯が素食をするのは、土地で好い牛肉が得られないからだと、何十年と継続している伯の原始的生活をも、猜疑の目を以て視る。 Dostojewski は「罪と償」で、社会に何の役にも立たない慾ばり婆々あに金を持た・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
出典:青空文庫