・・・ とにかく、その突然の変化の起こったのは浜口内閣の緊縮政策の高潮に達したころであったので、この政策と切符の紙質の変化とになんらかの連関がありはしないかと考えてみたことがあった。 事実はとにかく、このような連関は鉄道省とそれを統率する・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・画家だって、社会組織が違うから昨今の日本みたいに大小ブルジョアが小遣緊縮しはじめたおかげで閉口するようなことはない。これも、やっぱり人民文化委員会が調整して、やって行く。 ――いやに窮屈みたいじゃないか。計画。計画。それに、誰だったかや・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・全身の筋肉が緊縮して、体は板のようになっていて、それが周囲のあらゆる微細な動揺に反応して、痙攣を起す。これは学術上の現症記事ではないから、一々の徴候は書かない。しかし卒業して間もない花房が、まだ頭にそっくり持っていた、内科各論の中の破傷風の・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
・・・たとえばあの大部なアンナ・カレニナのどのページを取ってみても、私は極度に緊縮と充実とを感じるのである。 ドストイェフスキイを冗漫だとする批評はかなり古くからあるが、私は冗漫を感じない。内容がはち切っているから。――もっとも技巧から言えば・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
出典:青空文庫