・・・……だけは、留守へ言って置くくらいだが、さて、何年にも、ちょっと来て二羽三羽、五、六羽、総勢すぐって十二、三羽より数が殖えない。長者でもないくせに、俵で扶持をしないからだと、言われればそれまでだけれど、何、私だって、もう十羽殖えたぐらいは、・・・ 泉鏡花 「二、三羽――十二、三羽」
・・・帰って家内に相談しましてね、貯金ありったけ子供の分までおろしたり物を売ったりして、やっと八千両こしらえましてな、一人じゃ持てないちゅうんで、家族総出、もっとも年寄りと小さいのは留守番にして総勢五人弁当持ちで朝暗い内から起きて京都の堀川まで行・・・ 織田作之助 「世相」
・・・大阪の東洋紡績の救護隊総勢二十人近くなかなか手くばりをして、賑に来て居る。となりに居た海軍大佐金沢午後七時〇五分着同三十分信越線のりかえのとき、急行券を買う、そのとき私共と同盟し自分は私共の切符を買ってくれるから、私共はその人の荷物を持ち、・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・ 高見権右衛門は討手の総勢を率いて、光尚のいる松野の屋敷の前まで引き上げて、阿部の一族を残らず討ち取ったことを執奏してもらった。光尚はじきに逢おうと言って、権右衛門を書院の庭に廻らせた。 ちょうど卯の花の真っ白に咲いている垣の間に、・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫