・・・ いまその施薬の総額を見積ると、見舞金が七十人分七百円、薬が二千百円、原価にすれば印紙税共四百二十円、結局合計千二百円が実際に費った金額だ。ところが、この千二百円を施すのに、丹造は幾万円の広告費を投じていることか、広告は最初の一回だけで・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・ 主人は、杜氏が去ったあとで、毎月労働者の賃銀の中から、総額の五分ずつ貯金をさして、自分が預っている金が与助の分も四十円近くたまっていることに思い及んでいた。 杜氏は、醸造場へ来ると事務所へ与助を呼んで、障子を閉め切って、外へ話・・・ 黒島伝治 「砂糖泥棒」
・・・たちまち一面に火災がおこり、相模、伊豆の海岸が地震とともにつなみをかぶりなぞして、全部で、くずれたおれた家が五万六千、焼けたり流れたりしたのが三十七万八千、死者十一万四千、負傷者十一万五千を出し、損害総額百一億円と計上されています。 東・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・郵便局の局員が、こんな事を公表してはいけない事になっているのですけど、とにかく花江さんは、局長にからかわれながらも、一週間にいちどくらいは二百円か三百円の新円を貯金しに来て、総額がぐんぐん殖えているんです。まさか、いい旦那がついたから、とも・・・ 太宰治 「トカトントン」
・・・ 本年度の国庫予算は六月下旬に議会を通過した。総額三、九九三億円である。前年度の予算総額は二、一四三億円であった。ほとんど倍額に近いこの予算総額は、最近における日本のインフレーションのすくいがたい悪化を物語っており、同時に一般人・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・p.232○生活力の総額の数秒時における痙攣 p.241○彼の作品における 時間と空間との克服の能力は、認識の及ばないところである p.241○つねにわき返っている肉と脳髄である。p.243○彼の作品の冗漫性にある意味――事・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・ 彼女たちは、その家政科の学識を駆使して、まず一定の生産的な社会的な勤労に従う男女はどれだけの食餌、どれだけの休養、どれだけの文化衛生費を必要とするか、客観的な標準を立てて、さておのおのの収入総額によってどれだけの不足がどの部分に生じて・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
出典:青空文庫