・・・ 二四 あわてたところで、だめなものはだめだから、まず書きかけた原稿を終ってしまおうと、メレジコウスキの小説縮写をつづけた。 レオナドの生涯は実に高潔にして、悲惨である。語らぬ恋の力が老死に至るまで一貫しているの・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・今私がここにそれをそのまま縮写するのみでは役立つこと少ないであろう。それはくわしき伝記について見らるるにしくはない。ここには同じ宗教的日本主義者として今日彼に共鳴するところの多い私が、私の目をもって見た日蓮の本質的性格と、特殊的相貌の把握と・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・ただ俳句十七字の小天地に今までは辛うじて一山一水一草一木を写し出だししものを、同じ区劃のうちに変化極まりなく活動止まざる人世の一部分なりとも縮写せんとするは難中の難に属す。俳句に人事的美を詠じたるもの少きゆえんなり。芭蕉、去来はむしろ天然に・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
宗達 宗達の絵の趣などは、知っている人には知られすぎていることだろうが、私はつい先頃源氏物語図屏風というものの絵はがきに縮写されているのを見て、美しさに深いよろこびを感じた。 宗達は能登の人、こま・・・ 宮本百合子 「あられ笹」
・・・ 師匠についてのみ語っている。縮写をよくしたこと、一心に描いたこと、それだけが語られている。 作家が自分の一生の半ばを顧みたとき、当然何かの影響をうけた――それに反撥したということも一つの影響である以上――何人かの作家が国の内外にあ・・・ 宮本百合子 「「青眉抄」について」
出典:青空文庫