・・・ ところが、文学の仕事というものは明治二十年代の日本で、硯友社が繁栄を極めていた程度の遊戯性で一般からみられていて、作家が歴史に負うている責任をその文学的業績のうちに見るというような水準まで来ていなかったから、二葉亭の作品は一部に高く評・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・ナチスは、ドイツ人だけが人類の中で繁栄すべき民族だと主張して、見識のせまい、偏見にみちた保守勢力に迎合した。そして、民族的偏見に火をつけて、自分らの政権を維持する便法にした。ナチスの他民族排撃の野蛮さは人類史の最大の汚辱といえる。ナチスは、・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・ギリシアの諸都市が、奴隷をもってその繁栄の基礎をなす生産労役をさせていたという現実が、この微妙な自由における矛盾の心理的根拠となっている。ギリシアの自由都市の人々は、自由人一人について奴隷数人という割合であった。自由なギリシア市民の精神は、・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・その証拠には、こんど第二次大戦に勝った強大国が、負けた諸国と無関係に自分の国の内だけの繁栄をたのしんでいられない有様を見てもわかる。 第一次大戦のとき、連合国の一つとして最も少い損害をうけたのはアメリカであった。第二次大戦で、最も僅かの・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・ 永井荷風によって出発したジャーナリズムは、インフレーションの高波をくぐって生存を争うけわしさから、織田作之助、舟橋聖一、田村泰次郎、井上友一郎、その他のいわゆる肉体派の文学を繁栄させはじめた。池田みち子が婦人の肉体派の作家として登場し・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・昔、アイヌ族が繁栄していた時代には、アイヌも立派な民族文字をもっていた。ところが、アイヌの住んでいた日本へ侵略して来た民族が、字をしまっておいた唐びつを掠奪した。そして、アイヌはこんにち自分の字をもっていないのだ、と。 この伝説は、圧迫・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・アメリカの莫大なる天然資源、素晴らしい国内消費、不断に展開しつつある繁栄。これらもまた考慮に入れなければならない。西欧の資本家は利潤と返還資金を待望している。英国がこれらを供給しなければならぬ。 それ故労働組合運動は経済単位としての英国・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫