・・・暖かい夢を柔らかなふわふわした白絹につつんだように何ともいえない心地がするかと思うと、すぐあとから罪深い恐ろしい、いやでたまらない苦悶が起こってくる。どう考えたっておとよさんは人の妻だ、ぬしある人だ、人の妻を思うとは何事だ、ばかめ破廉恥め、・・・ 伊藤左千夫 「隣の嫁」
・・・「純潔な」「臆病な」「気高い」「罪深い」等の倫理的価値もそのものとして先験的に存在するのである。財から抽象されたものでなく、実質的存在を持っている。 次にある価値を実現せしめることが、それ自らには善でも悪でもないというカントの考えは、価・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・――そして、我々がこうやって忍従している現在の生活が、やがてそのうちに奇怪で、不潔で、無智で、滑稽で、事によったら、罪深いもののようにさえ思われるかも知れないのです。――いよいよ、三木だ。へどが出そうだ。」「もし、もし。」水兵服着た女の・・・ 太宰治 「火の鳥」
出典:青空文庫