・・・と沼南夫妻に集中して高座よりは沼南夫妻のイチャツキの方に気を取られた。沼南の傍若無人の高笑いや夫人のヒッヒッと擽ぐられるような笑いが余り耳触りになるので、「百姓、静かにしろ」と罵声を浴びせ掛けられた。 数年前物故した細川風谷の親父の統計・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・見えるような馬を屠殺するために、連れて行くのを往来などで遊んでいて見た時、飼主の無情より捨てられて、宿無しとなった毛の汚れた犬が、犬殺しに捕えられた時、子供等が、これ等の冷血漢に注ぐ憎悪の瞳と、憤激の罵声こそ、人間の閃きでなくてなんであろう・・・ 小川未明 「天を怖れよ」
・・・ 悪態、罵声、悪意が渦巻き、子供までその憎悪の中に生きた分け前を受ける苦しい毎日なのであるが、その裡で更にゴーリキイを立腹させたのは、土曜日毎に行われる祖父の子供等に対する仕置であった。鋭い緑色の目をした祖父は一つの行事として男の子達を・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ そういう声もする。傍聴席の右側下政友会中島派というあたりが発源地らしい見当である。黙ってろ! いわせろ! そういう罵声も交々であった。 米内首相の答弁ぶりは、一つも気の利いたところのないものであるが、答弁の精神的態度とでもいうべきもの・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・あらゆる悪態、罵声、悪意が渦巻くような苦しい毎日なのであるが、その裡でゴーリキイを更に立腹させたのは、土曜日毎に行われる祖父の子供らに対する仕置であった。祖父は一つの行事として男の子供らを裸にし、台所のベンチへうつ伏せに臥かせ、樺の鞭でその・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫