・・・ 答 ある批評家は「群小詩人のひとり」と言えり。 問 彼は予が詩集を贈らざりしに怨恨を含めるひとりなるべし。予の全集は出版せられしや? 答 君の全集は出版せられたれども、売行きはなはだ振わざるがごとし。 問 予の全集は三百年・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・私などは未だ三十歳を少し越えたばかりの群小作家のひとりに過ぎない。自重もくそも、あるもんか。なぜ、やらないのだ。実は、からだが少し、などと病人づらをしようたって駄目だ。むかしの武士は、血を吐きながらでも道場へかよったものだ。宮本武蔵だって、・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・一方、無批判的な群小は九十九プロセントの偉大に撃たれて一プロの誤りをも一緒に呑み込んでしまうのが通例である。権威の大なる危害はここにあるのである。このような実例は科学史上枚挙に暇ないほどである。ニュートンが光の微粒子説を主張したという事がど・・・ 寺田寅彦 「科学上における権威の価値と弊害」
出典:青空文庫