・・・ 自分は友人と肩を並べて、起伏した丘や、その間に頭を出している赤い屋根や、眼に立ってもくもくして来た緑の群落のパノラマに向き合っていた。「ここからあっちへ廻ってこの方向だ」と自分はEの停留所の方を指して言った。「じゃあの崖を登っ・・・ 梶井基次郎 「路上」
・・・とても、まともには見られない生活が行列をなし、群落をなして存在している。貴兄のお兄上は、県会の花。昨今ますます青森県の重要人物らしい貫禄を具えて来ました。なかなか立派です。人の応待など出来て来ました。あのまま伸びたら、良い人物になり社会的の・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・蓮の花の世界の中のいろいろな群落を訪ね回ったのである。そうしてそこでもまたわれわれは思いがけぬ光景に出逢った。 最初われわれの前に蓮の花の世界が開けたとき、われわれを取り巻いていたのは、爪紅の蓮の花であった。花びらのとがった先だけが紅色・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
出典:青空文庫