・・・偶然の現象であるのかも知れないが、考え方によっては全然関係がないとも言われまい。 戦争中にも銀座千疋屋の店頭には時節に従って花のある盆栽が並べられた。また年末には夜店に梅の鉢物が並べられ、市中諸処の縁日にも必ず植木屋が出ていた。これを見・・・ 永井荷風 「葛飾土産」
・・・日本人の物の見方考え方の特色は、現実の中に無限を掴むにあるのである。しかし我々は単に俳句の如きものの美を誇とするに安んずることなく、我々の物の見方考え方を深めて、我々の心の底から雄大な文学や深遠な哲学を生み出すよう努力せなければならない。我・・・ 西田幾多郎 「国語の自在性」
・・・実在の世界、見られるものの世界であった。アウグスチヌスの自覚の哲学は、キリスト教的実在即ち歴史的実在を把握したとも考え得るが、中世哲学は宗教哲学であった。実在そのものを問題としたのではない。実在の考え方はギリシヤ的なるものを出なかった。中世・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・ だが、私は同時に、これと併行した外の考え方もしていた。 彼女は熱い鉄板の上に転がった蝋燭のように瘠せていた。未だ年にすれば沢山ある筈の黒髪は汚物や血で固められて、捨てられた棕櫚箒のようだった。字義通りに彼女は瘠せ衰えて、棒のように・・・ 葉山嘉樹 「淫賣婦」
・・・ことにその中の、クーボーという人の物の考え方を教えた本はおもしろかったので何べんも読みました。またその人が、イーハトーヴの市で一か月の学校をやっているのを知って、たいへん行って習いたいと思ったりしました。 そして早くもその夏、ブドリは大・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・自分たちの心や感情にある習慣の一部が旧いということがわかってきたと同時に、親たち、兄たち、または夫、そういうこれまで特に女の人の生活に対して多くの発言権をもっていた人たちの考え方の中には、もっとそれより根強いふるさがのこっていることもわかっ・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・を放言して、パージにかかわらず事大主義の政治的発言にまで立ち至っている林房雄の考え方は、一九三七年彼が官吏・軍人・実業家の関心事、すなわち侵略と搾取への情熱を文学の中心課題とすべきであるといった本質と、なんらちがったものでないことを知ること・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・このようなことは、禅機に達することだとは思わないが、カルビン派のように、知識で信仰にはいろうとしなければならぬ近代作家の生活においては、孝道氏の考え方は迷いを退けるには何よりの近道ではないかと思う。 他人のことは私は知らないが自分一人で・・・ 横光利一 「作家の生活」
・・・したがってこの書は、青年羅山の眼界が非常に狭く、考え方が自由でないことを思わせる。 羅山は非常に博学であって、多方面の著書を残している。その言説は権威あるものとして尚ばれていたであろう。しかし『排耶蘇』に現われているような偏頗な考え方は・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・この劇的雄弁術を演技だと考えていた吾人は、デュウゼが新しい考え方と演じ方とをもって出現するに及び革命に逢着した。デュウゼにとっては動作は終局でない。真の演技の邪魔となるに過ぎない。彼女にとっては最も大なる瞬間は最も深い静寂の時である。情熱を・・・ 和辻哲郎 「エレオノラ・デュウゼ」
出典:青空文庫