・・・ その職員室真中の大卓子、向側の椅子に凭った先生は、縞の布子、小倉の袴、羽織は袖に白墨摺のあるのを背後の壁に遣放しに更紗の裏を捩ってぶらり。髪の薄い天窓を真俯向けにして、土瓶やら、茶碗やら、解かけた風呂敷包、混雑に職員のが散ばったが、そ・・・ 泉鏡花 「朱日記」
・・・七月一日、病院の組織がかわり職員も全部交代するとかで、患者もみんな追い出されるような始末であった。私は兄貴と、それから兄貴の知人である北芳四郎という洋服屋と二人で相談してきめて呉れた、千葉県船橋の土地へ移された。終日籐椅子に寝そべり、朝夕軽・・・ 太宰治 「川端康成へ」
・・・ 二時間目の授業を終えて、職員室で湯を呑んで、ふと窓の外を見たら、ひどいあらしの中を黒合羽着た郵便配達が自転車でよろよろ難儀しながらやって来るのが見えた。私は、すぐに受け取りに出た。私の受け取ったものは、思いがけない人からの返書でした。・・・ 太宰治 「新郎」
・・・太平洋からまともにはげしい潮風の吹きつけるある南国の中学にレコードをとどめた有名なストライキのあらしのあった末に英国仕込みでしかも豪傑はだの新しい校長が卒業したての新学士の新職員五六人を従えて赴任すると同時にかび臭いこの田舎の中学に急に新し・・・ 寺田寅彦 「野球時代」
・・・(米人のわれに負けたるをくやしがりて幾度も仕合を挑むはほとんど国辱この技の我邦に伝わりし来歴は詳かにこれを知らねどもあるいはいう元新橋鉄道局技師米国より帰りてこれを新橋鉄道局の職員間に伝えたるを始とすとかや。(明治十四、五年の頃それよりして・・・ 正岡子規 「ベースボール」
・・・「わあい、けんかするなったら、先生あちゃんと職員室に来てらぞ。」と一郎が言いながらまた教室のほうを見ましたら、一郎はにわかにまるでぽかんとしてしまいました。 たったいままで教室にいたあの変な子が影もかたちもないのです。みんなもまるで・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・勤労時間を一部さいて、そういう専門の講習を与えるように、婦人職員、従業員の価値は重んじられていない。そうだとすれば、同一労働同一賃銀ということは、勤労婦人自身にとって自信のあるよりどころを持っていないことになる。そのために、労働基準法で、母・・・ 宮本百合子 「いのちの使われかた」
・・・この判断がどんなに正当かという裏書は現に農林省の官吏たちが職員大会を開いて食糧の人民管理を叫んでいる。これらのその道の人達は自分たちの職域を通じて農林省、農会、営団を貫くからくりに通暁しているからこそ、公正な人民管理を主張しているのである。・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
皆様の現場録音を拝見して、きょうの真面目な若い女性の心持に同感いたしました。いくつかの感想もあります。女子職員の声に出されていた質問とその答について順々にとりあげてゆきましょう。 (1)の男女交際ということも、男と女と・・・ 宮本百合子 「悔なき青春を」
・・・最も退嬰的であると考えられていた教員、全逓・官公庁の職員も婦人をこめて今は前線に進んでいます。農民組合は日本全国にわたって供出の合理化と公正な農地調整法の実現のために闘っており、日本でははじめて全国的な農民組合婦人部の大会が近々にもたれよう・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
出典:青空文庫