・・・ 此の時分から彼は今まで食べていた毎日の食物に飽きたと言い、バターもいや、さしみや肉類もほうれん草も厭、何か変った物を考えて呉れと言います。走りの野菜をやりましたら大変喜びましたが、これも二日とは続けられません。それで今度はお前から注文・・・ 梶井久 「臨終まで」
・・・ お菜は、ふのような乾物類ばかりで、たまにあてがわれる肉類は、罐詰の肉ときている彼等は、不潔なキタない豚からまッさきにクン/\した生肉の匂いと、味わいを想像した。そして、すぐ、愉快な遊びを計画した。 五分間も経った頃、六七名の兵士た・・・ 黒島伝治 「前哨」
・・・食物でも肉類などはあまり好きでなかったのが運動をやり出してから、なんでも好きになり、酒もあの頃から少し飲めるようになった。前には人前に出るとじきにはにかんだりしたのが、校友会で下手な独唱を平気でするようになった。なんだか自分の性情にまで、著・・・ 寺田寅彦 「枯菊の影」
・・・平たく言えば、われわれ人間はこうした災難に養いはぐくまれて育って来たものであって、ちょうど野菜や鳥獣魚肉を食って育って来たと同じように災難を食って生き残って来た種族であって、野菜や肉類が無くなれば死滅しなければならないように、災難が無くなっ・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・則ち肉類や乳汁を、あんまりたくさんたべると、リウマチスや痛風や、悪性の腫脹や、いろいろいけない結果が起るから、その病気のいやなもの、又その病気の傾向のあるものは、この団結の中に入るのであります。それですからこの派の人たちはバターやチーズも豆・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・もやしでも何でも、少々の肉類、玉葱のいい加減にきざんだもの、それを皆一緒に豚油をとかしたものでいため、だしを入れて塩と砂糖、醤油で好みに味をつけ、下すすぐ前にサラダ菜をむしって洗っておいたものをほどよく手でちぎって入れ、ぐったりしたところで・・・ 宮本百合子 「十八番料理集」
・・・けれどもわたくしは一体、お魚がひどくすきというのではないので、牛肉などなら毎日でも結構ですけれど、お魚をそう続けられては見るもいやになります。肉類にしても、東京の堅い鶏肉はあまり好みません。特に好物といえばあい鴨です。 野菜では、胡瓜と・・・ 宮本百合子 「身辺打明けの記」
一、蝦、鰒類、うなぎ、肉類、新鮮な野菜二、味のすっぱいものは食べられません。見た形や色がいやな連想を与えるもの、例えて云うと、近頃焼魚をまるで食べられない如く。〔一九二四年一月〕・・・ 宮本百合子 「すきな食べ物と嫌いな食べ物」
・・・ 例えば現在ではソヴェト同盟の勤労者の一人が一年に食う卵の数は九〇個ばかりだ。それが百五十五個食えるようになる。 肉類は四十九キログラムだったのが、六十二キログラムになる。牛乳、バタ類は、二百十八キログラムから三百三十九キログラムに・・・ 宮本百合子 「ソヴェト労働者の解放された生活」
・・・大抵、米国の中以上の家では、肉汁、肉類野菜の一皿。サラダが主なもので、あとは菓子、果物と珈琲位の献立てです。瓦斯が自由に使え、いつでも蛇口を廻せば熱湯が出る台処は、働くに着物を汚す場所でもなければ、心持の悪い処でもありません。一時間も準備に・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫