・・・ 楢夫は、草の上に倒れながら、横目で見ていますと、小猿は向うで、みんな六疋位ずつ、高い高い肩車をこしらえて、塔のようになり、それがあっちからもこっちからも集って、とうとう小猿の林のようなものができてしまいました。 それが、ずんずん、・・・ 宮沢賢治 「さるのこしかけ」
・・・ 見るともう狐の学校生徒が沢山集って栗の皮をぶっつけ合ったりすもうをとったり殊におかしいのは小さな小さな鼠位の狐の子が大きな子供の狐の肩車に乗ってお星様を取ろうとしているのです。 みんなの前の木の枝に白い一枚の敷布がさがっていました・・・ 宮沢賢治 「雪渡り」
・・・一人の娘をカールが肩車にのせ、もう一人の娘をW・リープクネヒトが肩車にのせ、息の切れるほど駈けっこをする「騎兵遊び」はマルクス家専売の大人と子供の遊びであった。娘たちが大きくなってからは、彼女たちのシェークスピアの詩の暗誦仲間であり、バーン・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・隊伍の足なみは段々精力的に高まって来て、ある角では出獄した同志たちが、肩車ではこばれる姿が見えた。或るところでは、体をうしろに反らせた駈足となり、幾本もの旗は列をとりまいてひらめき、わっしょ、わっしょという地鳴りのような声々とザッザッ、ザッ・・・ 宮本百合子 「風知草」
出典:青空文庫