・・・害毒の一つは能動的に、他人をも通人に変らせてしまう。害毒の二つは反動的に、一層他人を俗にする事だ。小えんの如きはその例じゃないか? 昔から喉の渇いているものは、泥水でも飲むときまっている。小えんも若槻に囲われていなければ、浪花節語りとは出来・・・ 芥川竜之介 「一夕話」
・・・、これは偶然のことであって決して俳句の精神と本質的に連関しているものとは思われない。仏教的な無常観から解放された現代人にとっては、積極的な「風流」、能動的な「さび」はいくらでも可能であると思われる。日常劇務に忙殺される社会人が、週末の休暇に・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・物は人を動かすが、人が又物をいかに強力にうごかすかという人類の能動力その相互関係において有機的に芸術を見、且つ生もうとする段階に到達しているのである。徳永氏が傑れたものとしてあげている『中央公論』六月号のスペイン戦線からの作家たちのルポルタ・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・文学の創造というものが真実人類的な美しい能動の作業であるならば文学に献身するというその人の本性によって、人類、社会が合理的に発展前進しようとする活動に共働しないではいられない。創造そのものがきのうの自分から生きぬけて明日にすすむことでしかな・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・新しいヒューマニズム、その能動精神、その行動性という観念がよろこび迎えられて、間もなく雑誌『行動』がうまれ、舟橋聖一、豊田三郎その他の人々が、能動精神の文学をとなえはじめた。 一方では、前年ヴェノスアイレスの国際ペンクラブ大会に日本代表・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・であったから小松清が、第一回文化擁護国際作家大会の議事録を翻訳紹介して日本にも平和と文化を守る広い人民戦線運動をおこそうとしても、なんのまとまった運動にもならず、舟橋聖一、豊田三郎などの人々によって「能動精神」とか「行動主義の文学」とかが提・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・ 一九三三年の春、プロレタリア文化団体が壊滅させられた後、ファシズムに抗する人民戦線の問題、文学における能動精神がフランスから紹介されたが、近代の市民生活の歴史をもたず、封建保守の傾きのつよい当時の日本の作家の雰囲気の中には、いつも、こ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・私は、今日女性の心の中には、新たに目覚めた人としての燃えるような意図と共に、過去数百年の長い長い間、総ての生活を受動的、隷属的に営んで、人及び自分の運命に対しては、何等能動的な権威を持ち得なかった時代の無智、無反省、無責任の遺物が潜んでいる・・・ 宮本百合子 「概念と心其もの」
・・・国防婦人会の班長になった友代が、その役目のなかで発揮してゆく能動性について、作者は何と腹の中で見ているのだろう。そういうことにも、大衆の婦人の生活の中にかくされている能動的なものはきっかけをつかんでゆくものだ、という歴史的な目が、情愛をもっ・・・ 宮本百合子 「「建設の明暗」の印象」
・・・これにあきたらず、作家に生活的・文学的能動の精神を要求して起った一団の作家達があった。舟橋聖一、小松清、豊田三郎の諸氏で、これらの人々は雑誌『行動』によって行動の文学を創らんとしたのであった。 彼等は作家のより広汎な社会生活と生活に対す・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
出典:青空文庫