・・・日にやけた顔色はよいけれど、それで衛生にいいのだろうか、もし炎天下のむき出した頭が衛生によいのだとしたら、どうして毎夏脳炎の流行期に、頭をむき出して炎天にさらしていないように、と特別の注意がされて来ていたのだろう。女学校の女の子は年も稚く、・・・ 宮本百合子 「女の行進」
・・・Bはよく説明してもらいましたが、脳炎などの後、本当に失明してしまうのは、視神経が萎縮してしまうので、眼底をみれば神経の束が眼球に入ってきているところに細い血管が集っていて、それが独特なカーブを書いてそのカーブの深さで視神経が萎縮して低くなっ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・笑い草ですが、余り頭が苦しくて昏々と眠るからね、もしかしたらこの頃流行の嗜眠性脳炎ではないかと思って、もしそういう疑いがあれば正気なうちにあなたに手紙を書いて置こうと思ったの。書くと云ったって結局今の私の心持で何も特別なことはないわけですが・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 松山くにが十八歳になったとき、彼女は結核性脳炎にかかって、数日のわずらいで亡くなった。 彼女には、「あの包み」といって大事にしている一つの包みがあった。その包みの中には、彼女が療養所生活の中であきずにかき綴った作文の帳面がいく冊か・・・ 宮本百合子 「病菌とたたかう人々」
出典:青空文庫