・・・古い服の袖に赤十字の腕章をピンで止めたきりの普通のなりで、その上へいつも研究所で着ている白いブルースを着けるだけで、キュリー夫人はどんな特別の服装もしなかった。食事のとれないなどということはざらであった。どんなところででも眠らなければならな・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・椎名町支店長は、痛恨をもって、自分が、怪人物の腕に巻いていた衛生局の腕章にけおされて、行員にも服薬させたことを告白している。そして、日本人のわるい癖で役所からというとつい服従する、と歎いて語った。 日本の人民は、久しい絶対主義と封建性と・・・ 宮本百合子 「目をあいて見る」
・・・レイン・コートの一隊は右手に赤い布で腕章をつけている。墨でそこへ何かかいてある。自分はポーランド語が読めない。それでもロシア語に似た、ポリーシャという字は読めた。よく見るとその前には、市街という字がある。 そうするとこれは反動青年団だ!・・・ 宮本百合子 「ワルシャワのメーデー」
出典:青空文庫