・・・お絹はそこにあった空気枕や膝掛けや、そうした手廻りのものを、手ばしこく纏めていた。 下へおりると、おひろが知らしたとみえて、森さんももうやってきて、別製の蓮羊羹なぞをおびただしく届けさせてきた。「先生、これはちょいといいもんです。お・・・ 徳田秋声 「挿話」
・・・けれども鞄膝掛けその他いっさいの手荷物はすでに宿屋の番頭が始末をして、ちゃんと列車内に運び込んであったので、彼はただ手持ち無沙汰にプラットフォームの上に立っていた。自分は窓から首を出して、重吉の羽二重の襟と角帯と白足袋を、得意げにながめてい・・・ 夏目漱石 「手紙」
・・・そう答える私は元禄袖のどてら姿、従弟はその辺にあった膝掛けを洋服の上から羽織った恰好で、お茶を注ぎ、寝ようよ寝ようよと云いながらつい話が弾んで明方近くになってしまった。 若いサラリーマンである従弟の話の中に、この頃の若い女のひとで結婚は・・・ 宮本百合子 「未開の花」
出典:青空文庫