・・・同時に、自国の権力が与えるめかくしも、拒絶すべき時期だと思う。偏見のない人民こそは、最もあざむきにくい民である。 第九巻には、主としてソヴェトの文化・文学の問題が集められ、十八年前にかかれたソヴェト生活のレポートは、きょうはじめてややま・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・ ところが、昨今の日本の文化は、自国の社会生活の破壊の色どりである売笑現象に対して、奇妙に歪んだ態度で向っている。映画に軽演劇に登場する夜の女の英雄扱いはどうだろう。ある婦人雑誌では某作家が横浜の特殊な病院へ入院中の夜の娘たちを訪問して・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ 近東の少数民族の大衆は、灼けつく太陽の熱や半年もつづく長い冬の中で原始的な手工業、地方病と、封建的地主、親方の二重の搾取の下で、極めておくれた文化をもっていた。 自国語で読み書きすること、著作すること、芝居することまでを禁止され、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ウクライナ地方の自国語で書くことは許されず、軍隊の中でさえ「ハホール」と呼んで侮辱的扱いをうけた。 社会主義の社会で民族は真の意味で自立し、新しい生産と文化とが結びつきながら高揚し、調和しあうものとして動きはじめている。ハリコフ市はそう・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・一つの民族の社会と文学の健全にとっては、少数の西欧文学精神のうけつぎてが、自国の文学について劣等感に支配されつつ、翻訳文学であるならば、つとめてその優性をひき出すとしても、多くプラスするところはない。中国の文学的教養の大きい部分がフランス文・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・インベックのダイナミックな手法が、彼の旅行記の中でソヴェト社会の建設の姿を典型的につかむことに成功しているにしろ、彼がブルジョア・デモクラシーとプロレタリアートの階級的独裁の本質的なちがいを理解せず、自国の金融資本の独裁をみずにスターリンの・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・日本というものの独自性の或る面、外来語でも何でもいつしか自国語にしてしまって、便利なように訛りさえして、日常の便利につかうところに、寧ろ示されてさえいると思えるが如何だろう。 文章のわかりやすさ、無制限に数の多い漢字を整理し、複雑な仮名・・・ 宮本百合子 「今日の文章」
・・・ 斯様に外国の作家を尊重する現象は直に自国の優秀な作品を持たないと云う事には成るまい。嘗て米国は Stevenson や Allan Poe を産んだのだ。けれども今 Kipling に匹敵する作家としては O. Henry と数え始め・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・ 軍備の完備した国家は、自国を防禦する筈のその軍力を以て祖国を失ってしまいます。 物質の豊かな国民は、その豊かな物質に首を絞められます。 斯様にして、権利を所有するが為に却って、魂を汚す彼女等は、同時に又その豊かな――そして其を・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・民族の自由と独立ということは、いまの日本のようにひと握りの特権者が、他国の資本主義擁護の政党の利益とむすびついて、自国の人民を苦しみにつきおとしている状態の時には、人民自身の生存と文化の擁護のために闘うべき中心的課題になります。現代の日本の・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
出典:青空文庫