・・・妹に真の自立性というものを教えて、勝気のために却って歪む自尊心の負傷を少くしてやりたいこと。咲が自分の亭主に対してもう少し正しい健康な意味での影響をもつように、そうしてよいものだと確信するように。それらのことは、私が家を別にして生活すると出・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 世界には、きょう、少く見つもって六億の男女が平和を擁護し第三次の戦争を挑発するファシズムに反対して民族の生活と文化の自立を確保しようとしている。ファシズムによる第二次大戦は、破壊の残虐と痛苦で人類の心臓を出血させた。そして、きょうにな・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 実際に世界の平和と日本の自立の為には、日本管理に関係のあるソヴェト同盟、中華人民共和国、その他オーストラリヤ、イギリスその他の国々の同意がなければなりません。 私達はうっかりしていて、思いもかけない事になるような講和は御免です。・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
・・・日本の婦人作家は、自身の文学の成長の過程で、旧来、女子供と一括されて来ていたその社会のしきたりをかえて、女と子供とは二つの別のものであってそれぞれに自立した生活の内容をもって、社会にかかわりあってゆくものである事実を明瞭にしようとする時期を・・・ 宮本百合子 「子供のためには」
・・・生活との経済的なくみうちが前面にのっていて、しかも、これまでの日本の社会では、経済上、自立した一つの単位として見られることのなかった主婦、母たちのもがきであるために、苦悩と混乱とは名状しがたい。手記をかいている少数の人々の生活でさえそうなの・・・ 宮本百合子 「『この果てに君ある如く』の選後に」
・・・それは欺瞞のない日本の民主化と自主自立の民族生活をもつことである。新しい五人の放送委員はあらためてそのような誓いをするわけなのだろうか。 なお放送委員会はその職責をはたすために商業、工業、金融、労働、農業、教育、地方自治などの団体代表の・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・目前の事象の圧力が人間精神の自立性に対してそのように現われているとすれば、同時に現実は複雑だからそれへの批判者としての人間精神も在らざるを得ない。時空的なものに制御を受けつつも、制御を与える時空的なものと、それを蒙っている自己の状況に対して・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・或る賞のために努力した若い作家は、多くの場合その賞の審査員である諸作家の影響というものに対して、全く自立的な感情を持ち得ないであろうし、又私などはそのことで自身の芸術の素直な発展を阻害されている何人かの人を知っている。 今日の国家経済の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・ 日本が民主的自主的政治の能力を示して、世界に、自立的民族として存続する可能性の十分あることを示すか、或は、蒙昧な反動国として、民主的世界によって飽くまで監視されなければならない立場に置かれるか。次回の総選挙は、そういう意味で極めて重大・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・朝倉氏はもと斯波氏の部将にすぎなかったが、応仁の乱の際に自立して越前の守護になった。そうして後に織田信長にとっての最大の脅威となるだけの勢力を築き上げたのである。『朝倉敏景十七箇条』は、「入道一箇半身にて不思議に国をとりしより以来、昼夜目を・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫