・・・ただ今から、暫時の間、そのご文の講釈を致す。みなの衆、ようく心を留めて聞かしゃれ。折角鳥に生れて来ても、ただ腹が空いた、取って食う、睡くなった、巣に入るではなんの所詮もないことじゃぞよ。それも鳥に生れてただやすやすと生きるというても、まこと・・・ 宮沢賢治 「二十六夜」
・・・又病弱者老衰者嬰児等の中には全く菜食ではいけない人もありましょう、私どもの派ではそれらに対してまで菜食を強いようと致すのではありません。ただなるべく動物互に相喰むのは決して当然のことでない何とかしてそうでなくしたいという位の意味であります。・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ばけもの奇術師が、よく十二三位までの女の子を、変身術だと申して、ええこんどは犬の形、ええ今度は兎の形などと、ばけものをしんこ細工のように延ばしたり円めたり、耳を附けたり又とったり致すのをよく見受けます。」「そうか。そして、そんなやつらは・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・王 一っ時じゃ、ただの―― 一つ事を一日以上考えて居るのは大脳を神からよう授からなんだものの致す事での。 世間でわしは賢明じゃと申す通りの頭を持って居るのじゃ。法 さてさて、 鏡のかげんであばたもえくぼ 己惚の生・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
出典:青空文庫