・・・心なき高津の何をか興ずる。「ねえ、ミリヤアドさん、あんなものお飲ませだからですねえ。新さんが悪いんだよ。」「困るねえ、何も。」と予は面を背けぬ。ミリヤアドは笑止がり、「それでも、私は血を咯きました、上杉さんの飲ませたもの、白い水・・・ 泉鏡花 「誓之巻」
・・・図は四条の河原の涼みであって、仲居と舞子に囲繞かれつつ歓楽に興ずる一団を中心として幾多の遠近の涼み台の群れを模糊として描き、京の夏の夜の夢のような歓楽の軟かい気分を全幅に漲らしておる。が、惜しい哉、十年前一見した時既に雨漏や鼠のための汚損が・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・犬に吠えられるのは怖かったが、これはまた非常に可笑しく思ったから今以て思い出して独り興ずる折もある位で、本宅を捜したらまだ其大巾着がどこかにあるだろうと思います。 手習いの傍、徒士町の會田という漢学の先生に就いて素読を習いました。一番初・・・ 幸田露伴 「少年時代」
出典:青空文庫