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・・・あたりがとっぷり暮れ、私がやっとそこを立ち上がったとき、私はあたりにまだ光があったときとはまったく異った感情で私自身を艤装していた。 私は山の凍てついた空気のなかを暗をわけて歩き出した。身体はすこしも温かくもならなかった。ときどきそれで・・・
梶井基次郎
「冬の蠅」
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・・・なおそのほかに探険船シビリアコフ号を艤装して途中でいろいろの観測研究をすると同時にただひと夏に北氷洋を乗り切るという最初のレコードを作ろうという計画を立て、それが立派に成功したのである。この船の航海中に遭遇したいろいろな困難のエピソードにつ・・・
寺田寅彦
「北氷洋の氷の割れる音」