・・・ 何故なら、新しい歴史的世代がそれぞれの事情の中で、どうしても経て克服してゆかなければならない困苦、艱難の形は、他のより進んだ事情にあるところと比べて見れば、そこではもう過去になっている犠牲、献身、努力の形態をもって現れて来るのである。・・・ 宮本百合子 「「ゴーリキイ伝」の遅延について」
・・・ 室生犀星氏が近衛公や一部の顕官に逢い、一夕文学談を交したことで、軍人、官吏も文学を理解しようとする誠意を持っていると感激し、庶民出生の長い艱難多かった自身の閲歴をも忘却して、忻然として「行動の文学」を提唱し、勇躍して満州へ行く悲喜劇的・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・軍部の暴圧をしのんで艱難な日々をしのいでいた何の抵抗力ももたないおとなしい人民の男女、老人子供たちが、日本列島を戦略地点として確保することをいそいだ原爆によって、屍を重ねたのだった。 残酷、破壊という字を知っていないもののようにくりかえ・・・ 宮本百合子 「「人間関係方面の成果」」
・・・その線を発展させた党に力をあわせて度かさなる艱難を正しく克服してくるにつれて、ますますソヴェト人民の心にはレーニンにたいする深いほこりと愛とがよびさまされているだろう。そして世界人民の間に民族の独立・自由・平和をもとめる民主勢力がますにつれ・・・ 宮本百合子 「三つの愛のしるし」
・・・若者らが、この社会の不合理につき動かされて、様々の艱難にとびこんでゆく、その純な心根にこそ、先ず可憐に堪えぬ万斛の涙があろうと思う。自分が正しいと信じた上は、屈辱に堪えて私生子を生もうとした允子の心は、子に対した場合は実に俗人的になって、「・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫