・・・B しかしあれには色色理窟が書いてあった。A 理窟は何にでも着くさ。ただ世の中のことは一つだって理窟によって推移していないだけだ。たとえば、近頃の歌は何首或は何十首を、一首一首引き抜いて見ないで全体として見るような傾向になって来た。・・・ 石川啄木 「一利己主義者と友人との対話」
・・・等の翻訳、其から色色の作を見まして漸く文壇の為に働かるる事の多くなって来たのを感じて居りました中、突として逝去の報に接したのは何だか夢のように思えてなりません。近来の事は私が申さいでもいいから態と申しません。ただ同君の前期の仕事に抑々亦少か・・・ 幸田露伴 「言語体の文章と浮雲」
・・・それから色色な秘密らしい口供をしたり、又わざと矛盾する口供をしたりして、予審を二三週間長引かせた。その口供が故意にしたのであったと云う事は、後になって分かった。 或る夕方、女房は檻房の床の上に倒れて死んでいた。それを見附けて、女の押丁が・・・ 太宰治 「女の決闘」
出典:青空文庫