・・・けれども今日までたゆまずそこにくりひろげられ、発展されている社会主義的生活のよく艱難にたえてのびゆく芽立ちは、二十年前の現実の細部の中にまざまざと生きている。ソヴェトについてのこれらの物語は、古くて新しい。こんにちの歴史の下では、単にロシア・・・ 宮本百合子 「あとがき(『モスクワ印象記』)」
・・・な読んだワイルドの作品だのポウだの、武者小路実篤の書いたものを手に入る片はじから熱心に読み、自分から書くものはと云えば、手に負えない内心の有様とはかかわりない他愛のない物語だったことも、精神が不平均に芽立ちむらがったその年頃の自然だったのだ・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・七つ八つの子供から二十を越したぐらいの男や女の子が、様々の表情と風采とをもつ勤人たちの波に混って、楡の芽立ちかけた横通りを来るのである。それらの人通りは、あんまりひろくない通りいっぱいに溢れて来るから、こちらからその人の流をさかのぼるように・・・ 宮本百合子 「新入生」
・・・その紛糾も、社会生活の諸要素が、ゆたかな雨とゆたかな日光とにぬくめられて、一時にその芽立ちに勢立つ緑濃き眺めと云うよりは、寧ろ、もっと力学的な或はシーソー風なもので、風俗の上に現れるあの面は、関係として見ると、その面の裏であると云えるように・・・ 宮本百合子 「風俗の感受性」
出典:青空文庫