・・・ 脚本の事で思い出すが、つい先頃紐育で上場して非常な称讚を受けた Maeterlinck の“The Betrothal”が Alexander Teixeira de Mattos. と云う人の英訳で出版された。 あれは素晴らしい・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・けれども、ニューヨークの昼と夜とのあらゆる生活の表裏は、けっしてけっして彼の英訳された「昼と夜」と等しいものではない。愚劣なもの、醜悪卑劣なもの、同時に賢明、純良、壮大であり横溢的で、すべての現象が、現世界の全保有量の過半をしめるアメリカ的・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・だが、名人にとって将棋は娯楽の範囲にとどまって考えられてはいないだろうし、文学は、国の光として英訳して海外に誇るべきものの一つとして考えられ扱われている。源氏物語がその一例だが、将棋の友とそれとの間に、常識は別種のものを感じ理解している。・・・ 宮本百合子 「日本文化のために」
・・・そのくせ、そんなにありながら英訳し伊訳して立派な恥かしくないと思われるのは民間の金貨のようだと思われる。 第二日 鶏は女房孝行な内にもどっかつんとしたところがあるけれど、鴨はどこまでもいくじなしで鼻ったらしに見える。・・・ 宮本百合子 「芽生」
・・・それらの英訳が各国の翻訳論文集や、ミル、アダム・スミスとともに立ててある。ここは本屋でもある。正面の勘定台に男が二人、一人は立ったまま何か読んでいる。黒い細いリボンを白シャツの胸にたらした女が大きな紙の上で計算している。勘定台の後横から狭い・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫