・・・気分がいいと云ったって、結局豚の気分だから、苹果のようにさくさくし、青ぞらのように光るわけではもちろんない。これ灰色の気分である。灰色にしてややつめたく、透明なるところの気分である。さればまことに豚の心もちをわかるには、豚になって見るより致・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
・・・その辺一ぱいにならんだ屋台の青い苹果や葡萄が、アセチレンのあかりできらきら光っていました。 亮二は、アセチレンの火は青くてきれいだけれどもどうも大蛇のような悪い臭がある、などと思いながら、そこを通り抜けました。 向うの神楽殿には、ぼ・・・ 宮沢賢治 「祭の晩」
・・・ 太陽は一日かゞやきましたので、丘の苹果の半分はつやつや赤くなりました。 そして薄明が降り、黄昏がこめ、それから夜が来ました。 まなづるが「ピートリリ、ピートリリ。」と鳴いてそらを通りました。「まなづるさん。今晩は、あた・・・ 宮沢賢治 「まなづるとダァリヤ」
・・・ 皿の後に皿が出て、平らげられて、持ち去られてまた後の皿が来る、黄色な苹果酒の壺が出る。人々は互いに今日の売買の事、もうけの事などを話し合っている。彼らはまた穀類の出来不出来の評判を尋ね合っている。気候が青物には申し分ないが、小麦には少・・・ 著:モーパッサン ギ・ド 訳:国木田独歩 「糸くず」
出典:青空文庫