・・・のも、この野心的作家の出発が志賀直哉にはじまり、志賀直哉以前の肉体の研究が欠如していたからではあるまいか。だから、新感覚派運動もついに志賀直哉の文学の楷書式フォルムの前に屈服し、そしてまた「紋章」の茶会のあの饒慢な描写となったのである。・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・修練仕り申候ところ、卒然としてその奥義を察知するにいたり、このよろこびをわれ一人の胸底に秘するも益なく惜しき事に御座候えば、明後日午後二時を期して老生日頃昵懇の若き朋友二、三人を招待仕り、ささやかなる茶会を開催致したく、貴殿も万障繰合せ御出・・・ 太宰治 「不審庵」
・・・もっとも茶会の記事などを見ると実際自分の考えているようなモンタージュ展を実行しているのであるが、それは限られた少数の人だけのためのものでだれでもいつでも見られる種類のものではない。 西川一草亭の生花の展覧会などはある意味で花やくだものと・・・ 寺田寅彦 「青磁のモンタージュ」
・・・は常人の日暮しの中からは夙に蒸発してしまっていて、僅にその蒸溜のような性質のものが、茶会も或る意味でのコンツェルンであるブルジョアの間に、骨董屋を挾んで残存している。外国人に見せるものの中に茶の湯という項は必ずある。果してそれを今日の日本の・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
出典:青空文庫