・・・アナーキスト出身で著名な婦人作家で、その才能の素質と妻としておかれている偽瞞的な環境のためにアナーキズムから社会観を本質的に高められることができず、労働者弾圧にも動員される右翼の暴力団の生活に近接する機会をもつようになって、その描きてとして・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・ 第十四話、毛生動物の話は、やはりアメリカの生んだ著名な野生動物観察者であったシートンの「動物記」の面白さを懐しく想起させずにはおかない。シートンの熊の生活の報告、狐の話その他何と鮮明に語られていることだろう。ところが、シートンの相当な・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・その巖の特殊な現象と、その小島に限って南洋植物が生育しているのとが、青島を著名にしているのだが、私共は大してびっくりしなかった。宮崎県では、大事な名所の一つとしているのだろうが、島中に青島神社を祭ったぎり、その特徴ある島の成因について、科学・・・ 宮本百合子 「九州の東海岸」
・・・ 婦人洋画家として今日著名なひとは既に何人かある。その制作を系統だてて蒐集しているという人が果してあるだろうか。女の画家は、画壇で統領となれないから売れないと云われるが、画壇で統領になれないのは、現在の社会へ女が入ってゆくためには、門が・・・ 宮本百合子 「くちなし」
・・・のような女房をもった佃に同情すべきであるというような言葉が、著名なひとの文芸評論として登場したりした文学の時代でもあったのだった。 戦後、「伸子」が十六七歳の少女の心にも通じる女性の訴として日常生活のなかによまれはじめたとき、わたしの心・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・国際局が、ソヴェト共和国に対する戦争勃発の際文学者は如何なる態度をとるべきかについて、世界の著名な作家の間から集めた意見は、曾てイズエスチャ紙上に掲載されたところである。 外国支部の指導において国際局は、プロレタリア作家乃至その団体の右・・・ 宮本百合子 「ニッポン三週間」
・・・ 勿論この間には、多少生活感情上の暗闘がなかった訳ではありませんが、彼女は、稀な美貌と事務的敏腕を兼備し、その上、著名な良人を持ち、ロンドンでも数少ない程、調ったよき家庭の主婦であると云う素晴らしい調和で有名な一人の女性となりました。・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・彼女はバルザックをカストリィ公爵夫人のサロンに紹介し、そこに集るド・ミュッセやサント・ブウヴなど当時の著名な文学者に近づけるための努力をした。十数年後ハンスカ夫人に宛てた手紙の中でバルザックが当時の優しい回想に溺れながら述べているように、困・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ロシア全土は、歴史に著名なポベドノスツェフの辣腕によって窒息させられ、チェホフが友人への手紙に「ロシアは専制によって滅亡に近づいている」と書いた時代であった。多くの有能な生命が監獄とシベリヤとで滅ぼされている。しかし坐って論じている人々は、・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・例えば十九世紀の後半、全欧州を通じてもっとも著名な女流数学者であったソーニァ・コヴァレフスカヤは、マリアより十歳の年上であった。そしてロシアの進歩的な若い娘が旧式な親たちの望まない知識と社会的自由を手に入れる特別な方法として選んだ名義だけの・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
出典:青空文庫