・・・ところがそれがこの頃の薬品の価格の変動でだんだん欠損になって、どうにもしかたなくなったのです。わたくしはいろいろやって見ましたがどうしてもいけなかったのです。もちろんあの事業にはわたくしの全財産も賭してあります。すると重役会で、ある重役がそ・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・ あの顔に向う疵では、間の抜けた丹下左膳だねと笑いながら、すぐ註文の薬品その他を揃える仕度にとりかかった。 今年四つになる男の児がいて、その児は河北の夜に倒れたものの又従弟とでもいうつづきあいにあたっている。慰問袋を女が三人あつまっ・・・ 宮本百合子 「くちなし」
・・・それは、十月の明るい光線にガラスどもが光っている実験室の薬品くさい内部の光景として何でもないその一部分であるような、さりとて助手のひとが毎日見なれているあたりまえの情景であるとも云えなさそうな、はにかみを感じるのであった。 いもがやけて・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・医療材料、薬品も揃っていない。働いている人々といえば無能な医者と官僚主義に頭も心も痲痺している役人と、疲労困憊して自身半病人である少数の人々ばかりであった。 ナイチンゲールが女としての勘でもたらした品物と金とは、全く無限の役にたった。ス・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・何しろ戦局切迫ということを旗印として努力させられたから、決して八時間七時間というような労働時間では済まなかったし、婦人の肉体にとって極めて有害ないろいろの化学薬品などを取扱う爆弾、弾丸、ガス製作の職場でも、婦人の労働は長い時間強要された。・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫