・・・には犯罪被疑者がその性情によって色々とその感情表示に差違のあることを述べ「拷問」の不合理を諷諌し、実験心理的な脈搏の検査を推賞しているなども、その精神においては科学的といわれなくはないであろう。「小指は高くゝりの覚」で貸借の争議を示談させる・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・尤も雲の形状運動や、風向、気温のごとき今日のいわゆる気象要素と名づくるものの表示に拠りたる事もあれど、同時にまた動物の挙動や人間の生理状態のごとき綜合的の表現をも材料としたり。かくのごとき材料も場合によりてはあえて非科学的とは称し難きも、と・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・ただその感覚の段階的変化を表示する尺度がまだ発見されていないのは残念である。 そのころの郷里には「切りもぐさ」などはなかったらしく、紙袋に入れたもぐさの塊から一ひねりずつひねり取っては付けるから下手をやると大小ならびにひねり方の剛柔の異・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・次にその対象の見方および取扱いの上に如何なる特徴があるかと考えてみると、その対象の形態的ないし心理的の現象の中である特別な部分を抽象してその部分を誇大しあるいは挙揚して表示するというのが一つの顕著な点である。例えば鼻の大きい人の鼻を普通の計・・・ 寺田寅彦 「漫画と科学」
・・・日本でも、ボタン・ホールの花が、働く人民の意志の表示につながりはじめたことはおもしろく、うれしい。〔一九四九年一月〕 宮本百合子 「新しい潮」
・・・それはみんな意志表示の習慣をもっていないことを語る特徴だと指摘された。そして日本が民主的な社会となるためには、日本の男も女も、はっきりめいめいの意志と判断とにたってイエスかノーかを表現し、拒絶したいことは、あいまいに笑ってすぎないではっきり・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・生計の担当者である彼女たちの一票は少くともそれに反対する人民の意思表示となるべきであると思う。 安達ヶ原 群馬の或るところに恐ろしい人肉事件が起った。また再び詳しく話し返すに堪えない残忍な話である。今日、食糧事・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・はい、という言葉とありがとうということばしか意志の表示を知らないように自分の政府によって指導され扱われている日本の人々が、幾年かのちのまたこうした場合に立ちいたって、ついうっかり自分たちの現実判断をとりちがえ、植民地人民の世論調査によれば、・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・多くの人々の上に、その作品と他の面での市民的意思表示との間の発展的な矛盾があらわれている。或いはあれとこれとの間にある距離があらわれている。鎌倉で「平和を守る会」が発足した時、川端康成のよんだ平和宣言は人々の心を打った。「絵志野」とあの文章・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・筋として、「人間関係を表示する行為が、決定的に重要な意義をもって来る」ものとして会得した上で、今日流布している長篇小説のあれこれの内部にふれて思い到るとき、そこではどんなに屡々所謂事件の運びが文学本来の人間追求としての筋に代えられていたり、・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
出典:青空文庫