・・・ 学生のこういう意志表示を学生の本分にもとるという意見がある。しかし学生の本分とは何であろうか。学問がやってゆけないほどの月謝ねあげに反対しないで、どこに「教育をうけるべき」学生の本分の主張があるだろう。「放送の自由をまもり健全な発達を・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・婦女奴隷の上に悲しくも粉飾された町人の自由と人間性との表示でした。 明治四十年代の荷風のデカダニズムはさきにふれたように、正面から日本の歴史的軛に抗議することを断念した性格のものであったし、大正年代に現われた谷崎潤一郎などのネオ・ロマン・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・空想ではなくて、きわめてつよく表示されている歴史的意志である。アジアにおいて、限りない権限をゆだねられている一人の老将軍が、朝鮮の戦線に原子兵器を使用するかしないかを決定するという世紀の絶壁に立たされたとき、彼にノーと言わせる支柱となり、彼・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・ 人間の男女は、自然のままの表現としてはこんな発端で、愛情の永続を希う意志表示をして来た。そのような未開社会の男女の結合の間で、貞操などという言葉は思いつきもされなかった。同じくらいの好きさなら、同じぐらいいやでないならば、相手の男・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・しかし、平和愛好の公然たる意志表示、何かの行動にあたって、政治的になることは、意識してさけられつづけている。「チャタレー夫人の恋人」の起訴問題は、一面ではそのようなこんにちの日本の文学者の社会行動に関連してきわめて意味ふかい他の一面を語って・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・詩は歌謡との結びつきで、文学の形態としても一番集団の感情、意志表示に便宜であり、その性質から実に端的に率直に、詩の社会的性格や詩の背後にある集団の表情、身振りが現れて来ている。琵琶歌は昔の支那の詩形によっているものであるが、今日、それは勇壮・・・ 宮本百合子 「ペンクラブのパリ大会」
・・・意見を表示する拍手を一切してはいけないということや、取締り上必要と認めたときには退場させるということなどが、細かい字で印刷されているのである。ほかにすることもないから皆がすなおに出してよみかえした。 やがて一時半となり、今にも、と待つが・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
・・・親と子とが、ひとの前ででも、しゃんと互を傷けずに各自の意見を表示し得るようになれば、多くの家庭を今日重く複雑にしている面倒な気心のさぐり合いが減って、楽になるだろうと考えたのであった。 ところで、この座談会では、多くの部分が婦人と職業と・・・ 宮本百合子 「短い感想」
・・・ 自分は茲では文学的表示としての新しき感覚活動が、文化形式との関係に於ていかに原則的な必然的関連を獲得し、いかに運命的剰余となって新しく文学を価置づけるべきかと云うことについて論じ、併せてそれが個性原理としてどうして世界観念へ同等化し、・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・漢字をいきなり象形文字と考えるのは非常な間違いで、音を写した文字の方が多いこと、同じ音で偏だけ異なっているのは偏によって意味の違いを表示したもので、発音的には同一語にほかならないこと、従って一つの音を表示する基準的な文字があれば、象形的に全・・・ 和辻哲郎 「露伴先生の思い出」
出典:青空文庫