・・・という標題が目に触れたという冒頭が置いてあって、その次にこの無名式のいわゆる二十五日間が一字も変えぬ元の姿で転載された体になっている。 プレヴォーの「不在」という端物の書き出しには、パリーのある雑誌に寄稿の安受け合いをしたため、ドイツの・・・ 夏目漱石 「手紙」
・・・それ故にこそ、彼の最後の書物に標題して、自ら悲壮にも Ecce homoと書いた。Ecce homo とは、十字架に書きつけられた受難者キリストの標語であつた。ニイチェの意味に於ては、それがキリストに叛逆する標語であつた。あの中世紀の魔教サ・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・指導部はそう考えず、作者自身も、そういう標題小説が、はたして可能であるかどうかを深く考える力をもたず、割当に服した。ソヴェト同盟に関する場合、社会主義建設の事業は現代大きい摩擦のうちに行われている厳粛な人類的事業であり、多面的であり、当然矛・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・その表題に一寸母上が何故其を送ってよこされたかが疑われた、が、目次を見て、其中に自分の事が書いてあるらしいので、送られた理由が分った。 読んで見ると、好意のある文句で、自分の未来を期待して居る文句がある。 多分母上は其を見て、私にも・・・ 宮本百合子 「樹蔭雑記」
・・・という点から出発した。一九四八年二月の新日本文学をみると徳永直は「勤労者文学をもっと前におし出すこと」という表題で、みじかい文章をかいている。そのなかで彼が第三回大会で報告提案した「勤労者文学を前面におし出すこと、日本の民主主義文学は勤労者・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
私たちが、或るひとつの言葉からうける感じは、実に微妙、複雑なものだと、びっくりする。たとえばここに貞操について、という表題がある。これを見たとき、私たちの心に直感されたのは何だろう。貞操というもののたしかな価値の感じだろう・・・ 宮本百合子 「貞操について」
九月号の『婦人文芸』に藤木稠子という作者の戯曲「裏切る者」という一幕ものがのっていた。私は雑誌を開いたときその表題を見たのであったがつい用事に追われ、そのときはゆっくり作品を読む機会を失ってしまった。 ところが今日、あ・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・と金文字で書かれた一冊の本の表題を眺める視線に、それを「しん、じょ」と読み下そうとして、おやととまどうような表情はなくて、いくつもの若々しい女の目がちらりと、「しんおんなだいがく」と読み下して、格別、自分たちがそういう徳川時代の本の名にそん・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・妙な標題だなあ。」 そこへ雪が橢円形のニッケル盆に香茶の道具を載せて持って来た。そして小さい卓を煖炉の前へ運んで、その上に盆を置いて、綾小路の方を見ぬようにしてちょいと見て、そっと部屋を出て行った。何か言われはしないだろうか。言えば又恥・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・という標題の記事は、かなり客観的に書いたものであった。 * * * パアシイ族の少壮者は外国語を教えられているので、段々西洋の書物を読むようになった。英語が最も広く行われている・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
出典:青空文庫