・・・この趣味を描くために武蔵野に散在せる駅、駅といかぬまでも家並、すなわち製図家の熟語でいう聯檐家屋を描写するの必要がある。 また多摩川はどうしても武蔵野の範囲に入れなければならぬ。六つ玉川などと我々の先祖が名づけたことがあるが武蔵の多摩川・・・ 国木田独歩 「武蔵野」
・・・建築が設計者製図者を始めとしてあらゆる種類の工人の手を借りてできあがるように、一つの映画ができあがるまでには実に門外漢の想像に余るような、たくさんの人々の分業的な労働を要するのである。そうしてそれが雑然たる群衆ではなくて、ほとんど数学的「鋼・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ネーヴァル・アンニュアルなどを取り寄せていろいろな軍艦の型を覚えたり、水雷艇や魚形水雷の構造を研究したりしていたのであるが、一方ではどうにも製図というものにさっぱり興味がないのと、また一方では田丸先生の物理の講義を聞き、実験を見せられたりし・・・ 寺田寅彦 「田丸先生の追憶」
・・・それに要する作業費が二三千円であるが、地形図の基礎になる三角測量の経費をも入れて勘定すると、一枚分約一万円ぐらいを使わなければならない、そのほかにまだ計算、整理、製図、製版等の作業費を費やすことはもちろんである。 それだけの手数のかかっ・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・夜になると天井の丸太からつるしたランプの光に集まる虫を追いながら、必要な計算や製図をしたり、時にはビスケットの罐をまん中に、みんなが腹ばいになってむだ話をする事もある。いつもよく学校のうわさや教授たちのまねが出てにぎやかに笑うが、ま・・・ 寺田寅彦 「花物語」
・・・処々の大工場、実務学校などで熟練工の養成、再教育をしている中には、専門学校出の若い婦人を新たに機械工業のための製図師として再教育している実例もある。臨時工として種々の官営、民営工場に雇われ、工業部門に参加するようになって来た女の数はおびただ・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・二〇九名 第八工場 変圧器製造 六五〇名 第七工場 直流、交流発電キ 電キ機関車 五〇〇 第五工場 小型モーター セン風機 家庭器具 四五〇 第十一工場 製図、営繕十二工場が・・・ 宮本百合子 「工場労働者の生活について」
・・・ 暫く考えていたが、耕一は、「僕今夜は家にいた方がいいな」と云った。「友達が二三人手伝いに来て呉れることんなってるから――え? 製図――それに阿母さん工合わるがってるから、家へいらっしゃいよ」 なほ子は、灯のつき始めた山下辺・・・ 宮本百合子 「白い蚊帳」
・・・だけれども、レオナルドが、彼のフロレンスの仕事部屋で、人間をのせて飛ぶことのできる機械について力学的な計算をし、製図し、製作しているとき、彼の胸には、どういう感想があったろう。ギリシア神話にあるイカルスの冒険を、科学の力で、人類のすべてにと・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
・・・靴やの小僧、製図見習、聖画工場の見習。ヴォルガ通いの汽船の皿洗い小僧。ゴーリキイは二十四歳になる迄に、更にパン焼職人であり、カスピ海の漁業労働者であり、踏切番であり、弁護士の書記でありました。これらの生活の間でゴーリキイの見聞きしたものはど・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイについて」
出典:青空文庫