・・・それでもどうしても云うことを聴かない奴は、懲 これがKの、西蔵のお伽噺――恐らくはKの創作であろう――というものであった。話上手のKから聴かされては、この噺は幾度聴かされても彼にはおもしろかった。「何と云って君はジタバタしたって、所・・・ 葛西善蔵 「子をつれて」
・・・特務曹長「なるほど西蔵馬のしるしがついて居ります。」大将「これは普仏戦争じゃ、」特務曹長「なるほどナポレオンポナパルドの首のしるしがついて居ります。然し閣下は普仏戦争に御参加になりましたのでありますか。」大将「いいや、六十銭・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
・・・ それこそはたびたび聞いた西蔵の魔除けの幡なのでした。ネネムは逃げ出しました。まっ黒なけわしい岩の峯の上をどこまでもどこまでも逃げました。 ところがすぐ向うから二人の巡礼が細い声で歌を歌いながらやって参ります。ネネムはあわててバタバ・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
出典:青空文庫