・・・自分はまだそのときカントの第二批判を知らなかったが、自分のたましいの欲するところはとりもなおさずカントの至完善の要請であったのである。人間の倫理的養成がいかにわれらの禀性に本具しているかはこれでも思いあたるのである。その青春時代学芸と教養と・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・ストリンドベルヒのような女性嫌悪を装った人にもなおつつみ切れぬものは、女性へのこの種の徳の要請である。かようなものとして女性を求める心は、おしなべて第一流の人間の常則である。とりわけダンテにとってベアトリーチェは善の君、徳の華であった。・・・ 倉田百三 「学生と生活」
・・・彼は世界の災厄の原因と、国家の混乱と顛倒とをただすべき依拠となる真理を強く要請した。「日本第一の知者となし給へ」という彼の祈願は名利や、衒学のためではなくして、全く自ら正しくし、世を正しくするための必要から発したものであった。 善と・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・ これは学生時代から書物に対する態度をあまりに依属的たらしめず、自己の生と、目と、要請とを抱きつつ、書を読む習慣を養わなければならないのである。 他人の生と労作との成果をただ受容してすまそうとするのは怠惰な態度である。というのは生と・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・恋愛についてこうした理想的な要請をする場合に、私たちはそのことを考えると力抜けがするのを感じる。これはどうしても社会制度一般の正しい建てなおしをしなくてはならないのである。精神的理想を主張するものは、その意味で一方必ず社会改革の根本的運動に・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・一切の婦人は熱心に社会、国家の革新を要請し、そのために協力しなければならないのである。 しばらく社会改革を抜きにして考えるならば、職業と母性愛とをできる限り協定させるよりほかはない。結婚するまでの就職はもとよりいいであろう。それは真面目・・・ 倉田百三 「婦人と職業」
・・・綜合というのは、これに反し定義、要請、公理等の過程によって結論を証明する、いわゆる幾何学的方法である。而して彼は彼の『省察録』において専ら分析的方法を取ったという。何となれば、幾何学においては、その根本概念が感官的直観と一致するが故に、それ・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・「要請」という一つの文字の解釈のワナにかかって生命を絶たなければならなかった菅季治氏の悲劇を、ただ、彼の性格の弱さであると見るのは、浅薄ではないでしょうか。 菅氏の性格は相当粘りづよくあったようだし、意志が普通よりもよわかっ・・・ 宮本百合子 「若き僚友に」
出典:青空文庫