・・・たとえば安政元年の大震のような大規模のものが襲来すれば、東京から福岡に至るまでのあらゆる大小都市の重要な文化設備が一時に脅かされ、西半日本の神経系統と循環系統に相当ひどい故障が起こって有機体としての一国の生活機能に著しい麻痺症状を惹起する恐・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・このことは日本の地質構造、従ってそれに支配され影響された地形的構造の複雑多様なこと、錯雑の規模の細かいことと密接に連関している。実際日本の地質図を開いてそのいろいろの色彩に染め分けられたモザイックを、多くの他の大陸的国土の同尺度のそれと見比・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・すなわち、実証的科学の実験と同じ意味において一つの実験であったと考えることができるとすれば、われわれはこの大規模で高価な実験をむだに終わらせないように努力しなければならない。それには、この実験によって生じたいろいろの効果を正確に観察し、それ・・・ 寺田寅彦 「破片」
・・・過去百年の間に築き上げられたこの大規模の基礎を離れて空中に楼閣を築く事は到底不可能なことである。しかし物理学の基礎的知識の正当な把握は少しの努力によって何人にでもできることであるから、それを手にした上で篤志の熱心なる研究者が、とらわれざる頭・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
・・・ことしの大規模の観測所増設によって、今後北氷洋の状況がますます明らかになればなるほど今後の航海はますます楽になるわけであろう。 この航海のおもなる使命は純学術的よりはむしろより多く経済的なものであって、それも単にロシアの氷海を太平洋に連・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・時園内に在る建築物は帝室博物館と動物園との二所を除いて、其他のものは諸学校の校舎と共に悉く之を園外の地に移すべく、又谷中一帯の地を公園に編入し、旧来の寺院墓地は之を存置し、市民の居宅を取払ったならば稍規模の大なる公園となす事ができるであろう・・・ 永井荷風 「上野」
・・・俳人として第一流に位する蕪村の事業も、これを広く文学界の産物として見れば誠に規模の小なるに驚かずんばあらず。 蕪村は鬼貫句選の跋にて其角、嵐雪、素堂、去来、鬼貫を五子と称し、春泥集の序にて其角、嵐雪、素堂、鬼貫を四老と称す。中にも蕪村は・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・多くの人々が、この問題の本質上、今日ではもう個人的解決の時期を全くすぎていて、これは人民的規模において、男女共通に、共通の方法に参加して、各種の管理委員会をこしらえて、自主的な圧力で改善してゆくことに決心したら、どんなに早く、解決の緒につく・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・世界史がかきかわり、日本も世界史的規模で新たになってゆくという現実のよりどころは、文化に即して云えば窮極のところ次の世代の創造の可能力如何にかかっているのが事実である。 携帯口糧のように整理された文化の遺産は、時にとって運ぶに便利であろ・・・ 宮本百合子 「明日の実力の為に」
・・・それに抵抗して日本の理性と学問、文化の自立を主張する動きは、全日本の規模で全学問の分野を包含した。生きる自由、学び、働き、良心に従って行動する自由とともに、人権の一つとして奪われた理性を回復しようとする日本の青春の奮闘がある。すべての人々に・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
出典:青空文庫