・・・また、観光用国土、人民としての国際性から区別されなければならない。 これまで日本の市民生活に正常な国際性はかけていた。日本人民は世界を意識した明治のはじめに、もう世界を、競争の相手、負けてはならない国として教えこまれた。ひきつづいて超国・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・ 現実をこのように見ている眼をうつして、講和条約にそなえる日本として装われ、観光日本としてポーズされている日本を見たとき、わたしたちがそこに発見するのはなんだろう。シルク・ショウにあらわれている振袖姿の日本娘であり、文化交換として生花、・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
それを見たことで その人の人生に何かが加わり 或は何かが変る丈の力がなくては 観光の対象として極めて薄弱だ。「戦災のあとも見て貰って 十分満足させて」云々。これは心ある日本人をして 何となくばつの悪い思いをさせた。日本・・・ 宮本百合子 「観光について」
・・・今日そこを走るのは、労働者・農民の陽気な観光客を満載した遊覧乗合自動車だ。が、道普請は、昔そのためにされたのではない。軍用だった。帝政ロシアの権力が武力で、絹、皮革の産地チフリース、石油のバクー市を掌握するための近路として拵えたものなのだ。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
五月十九日の朝。日比谷映画劇場へ、国際観光局の映画の試写を見に行った。「富士山」、「日本の女性」。 そのとき挨拶をしたのは観光局の役人で、スマートなダブルの左右のポケットへ両手の先を入れた姿勢でラウドスピイカアの前へ立・・・ 宮本百合子 「国際観光局の映画試写会」
・・・高原の頂に国際観光ホテル建造中です。 この川が流れて千曲川に合します。この手前にやや濃い山の左手に長野がある。更に左手のこのハガキからはずれたところに雪をいただいた日本アルプスが見えます。落日を受けて美しいのはこの遠くかすんだ山々です。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
先月、日比谷映画劇場で、国際観光局が海外宣伝映画試写会をもよおした。「富士山」と「日本の女性」という二つの作品で、其映画のはじまる前に、映画製作に直接関係した課の長にあたる人の挨拶があった。これまでの日本の映画音楽がよくな・・・ 宮本百合子 「実感への求め」
・・・日本の美といえば京都、奈良、お濠の景色というのは、ものを知らない観光客だけではない。カソリック詩人のポール・クロウデルも、日本に来たときは、お濠の石垣を詩につくったし、日本の柳、三味線、徳川時代の服装の女を配した夢幻劇をつくった。日本の女の・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・人民戦線が勝利して以来、フランス出版物の輸入をきびしく制限しつつ、何のために志賀高原のてっぺんに国際観光ホテルを建てて、外務省がそのために尽力しなければならないのであろうか。 国威ということが、昨今新しい内容でとりあげられている。そ・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・妙義山がある。観光日本のポスターがちぢめられて出て来ている。その上、七銭と二銭の切手とは昔のままの東郷・乃木で、国際裁判をからかっているように見える。私たちには私たちの気に入った図案の切手がほしい。そう思うのは、きょうの現実の中で決して私一・・・ 宮本百合子 「郵便切手」
出典:青空文庫