・・・の中で、悲しい兄弟よ、と歎息した作者の心情は、その後永い歳月と波瀾を経て、社会史的な観点と未来の幸福の建設の具体的な方向とをつかむようになって来ている。この作品の背景となった農村の生活は、その後、作者の生活の大きな曲り角の一つ一つに、背景と・・・ 宮本百合子 「作者の言葉(『貧しき人々の群』)」
・・・という文章の中でも、くりかえし上にのべた観点を主張しておられる。そして、今日の機構がしからしめている「特許」というものの性質が反科学的であることにふれ、「幸にして、純粋の科学の世界には、このような資本主義の弊害はさほど及ぼして来ていない」云・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・ 警視庁の役人は、「人権がどうのということなしにむしろ自己の権利を守るという明るい観点から協力してもらいたい、」と語っている。万一あなたの身に不慮のことがあったとき、指紋さえあれば、すぐあなたの身元がわかりますから、と云われて、うれしい・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・ けれども、今日みれば、リアリスティックな厚みと素朴な熱誠がその作品のネウチで、農村と農民の生活はどこまでも、幼い人道主義的観点から描かれている。農村の窮乏の資本主義による経済的背景、階級としての農民などという認識は、どこにもない。つま・・・ 宮本百合子 「「処女作」より前の処女作」
・・・に対して、その作品がプロレタリア的観点からの著しい背離の傾向を以て書かれていることを指摘した点は、正鵠を得ている。両者の批評に際して、これらを決定的な非プロレタリア的作品としてしまっている点が誤りである。「樹のない村」についていうと、作・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ ソヴェトで、オペラは、過去からの遺産というはっきりした観点から扱われている。ソヴェトの新しい音楽家は、その大きな遺産をどう利用し、社会主義的な社会の感覚にふさわしい新形式へ進めるかという点で、大きな課題を与えられているわけなのだ。・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・この観点から、シェクスピアの喜劇「じゃじゃ馬馴し」は極めて愉快で強壮なモラルを語っている。人間・社会関係のあらゆる場合について。〔一九四八年二月〕 宮本百合子 「デスデモーナのハンカチーフ」
・・・「『弁証法的唯物論は党の世界観であり』、それは最高の観点であるから、社会の隅々までをも一番正しく見得る立場である」と。 宮島新三郎板垣鷹穂などは、同志小林の殉難を惜しみつつ、同志小林がその活動を文学的活動の範囲に止めておかなかったことを・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
・・・そのようないわば勘定高い民主主義者が、文化・文学の領域の問題となるとどうして全線的な観点から計量しようとする熱心をそこなわれるのでしょうか。ここに一人の民主主義作家があって、現にその作品は数万、十数万という広い人々の間に読まれている時、そし・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・著者はこの三百二十余頁の小冊子の中に、人間の能動的意志としての歴史を科学的に叙述しようと努力しているばかりでなく、それを「新しいヒューマニズムの観点からの叙述」とし、読者の知識慾に答えると共に人類の営々たる進歩のための努力、献身への共感を呼・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
出典:青空文庫