・・・の住民が何かのキッカケで、至極安直に革命を遂行し、ツァーの追っ払いをやり、目出度し目出度しとなるのだが、ソヴェト同盟のルバーシカを着た観衆はゾロゾロ、カーメルヌイ劇場から出て来ながら、この劇全体から受けた何だかいやな印象について議論した。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・「しかし、果して所期の成果をおさめておりますかどうかは、専門家の方々と海外の観衆の批判にまたなくてはなりません」 何となし、きいていて変な気がした。日本では、そういうことのわかるのは専門家だけで、海外なら一般の観衆のレベルがそこまで高い・・・ 宮本百合子 「国際観光局の映画試写会」
・・・「所期の成果をおさめて居りますかどうかは、専門家の方々の御意見と海外の観衆の批判にまたなければならないところであります」そういう意味の言葉であった。 それをきいていて私たちは何となし妙な気がした。日本のなかでは、専門家にしかその映画・・・ 宮本百合子 「実感への求め」
・・・何故なら、日本女はこのレーニングラードが持つ最もよい劇団の一つ「若い観衆の劇場」に、今坐って、幸福な数百の子供にとりまかれている。 舞台では、「インドの子供」の第二幕が進行中だ。 インドには、宗派による沢山の階級がある。その階級の差・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・それに対する鼓舞の熱い燃え輝く力で観衆を一かたまりに高揚すべき大切な場面だった。それにもかかわらず彼等はそれをどう表現したか? 必要とは全然逆に表現した。――彼等は考えた。大詰だ。ここで、えーと、誰と誰、誰を踊らしてやらなければなるまい。だ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・秀作も駄作も大きさで先ず観衆を瞠目せしめる風であった。今年は、それがいずれも余り大きい作品がなくなって来ている。大家連が筆頭で小品風なものを、小品風な筆致で描いて、その範囲での貫録を示すかのように新進の画家たちとは別にまとめて一室に飾られて・・・ 宮本百合子 「帝展を観ての感想」
・・・これまでの大人のそういう習慣を、果して観衆の全部が自分のこととして反省するところまで行っているだろうか。 切り抜き絵の插話が、一插話として軽く扱われたから、自然保育所での光景と家で母親が着物をひろげて見せる場面との間の脈絡に特別な注意が・・・ 宮本百合子 「「保姆」の印象」
・・・半ばさめ、半ば眠っている日本の現代への諷刺として、この点を興味ふかくとらえるならば、演出者は、ルネッサンスを歴史性ぬきの人間解放の面からだけ解説せず、その暗黒さにおいてもリアルに解説して、観衆の心に笑いながらいつか心にのこされてゆく疑問を植・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
・・・ 既にはっきり予見されているこれらの困難を製作者と観衆とはどのようにのり越え、企業性や統制の方向と折衝してゆくであろうか。今日の社会生活の全面にあらわれている多難性が、ここにも映っていると思われる。最近日本映画の優秀作品として「若い人」・・・ 宮本百合子 「観る人・観せられる人」
・・・この演出では、観衆の錯覚がたくみに利用されている。すなわち、警官隊の野蛮な襲撃や、検挙された学生が数百名にのぼることを、さも日本の学生が兇暴なものになってしまいでもしたように世界を偽瞞するための宣伝に使用しています。 われわれを、こ・・・ 宮本百合子 「若き僚友に」
出典:青空文庫