・・・が、新たに入社するものはこの伝統の社風に同感するものでも、また必ずしも沼南の人物に推服するものばかりでもなかったから、暫らくすると沼南の節度に慊らないで社員は絶えず代謝して、解体前の数年間はシッキリなしにガタビシしていた。 就中、社員が・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・それを目的として結婚したのに、その中心が失われたとすれば、もうその結婚は意味のないものとして、解体してしまうだろうか。そういう生理の条件であれば、愛着の心なんかは一つの感傷として踏みこえて、別の、子供をもてる男のひとをさがしてゆくのが自然な・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・日配の解体、再編成は、集中排除法という経済面から強行されて、三ヵ月以上にわたった出版界の経済封鎖の過程では、大出版企業者をのぞく、すべての出版事業がいちじるしい危機にさらされた。こんにち揺がない大出版企業の代表者たちが、文化上どのような性質・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・あの辺の村落は恐ろしい勢で解体しつつある。畑などどしどし宅地に売られ、広い地所をもった植木屋は新しい切り割り道を所有地に貫通させ、奥に、売地と札を立てた四角い地面を幾区画か示している。私なら、ああいう場処に住むのはいやと思った。新開地で樹木・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
・・・日本の財閥が外見上解体されたとして、どうして徒弟制が絶滅したといえよう。バイブルに、男女は差別ある賃銀を、と書いてはなかろうが、カソリック教徒である日本の文相は、それらを教員たちとの係争点にしている。あらゆる市民が半封建的なものからの離脱を・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・ 元は小学校の先生であった本庄さんは、知りあった頃は作家同盟の一員で、その文学の団体がやがて解体する前後には、荒い波を身にうけていた一人であった。のち『人民文庫』の編輯に力をつくされた。「白い壁」という小説は好評を博した。『人民文庫・・・ 宮本百合子 「作家の死」
・・・は既に文学上のグループとして解体していたが、昭和五年に出来た十三人倶楽部による「新興芸術派」の運動は、中村武羅夫の「花園を荒す者は誰だ」という論文を骨子として、反プロレタリア文学の鮮明な幟色の下に立った。同人としては中村武羅夫、岡田三郎、加・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
内外の複雑な関係によってプロレタリア作家が組織を解体してから、ほぼ一ヵ年が経過した。その困難な期間に発刊されたさまざまの文化・文学雑誌は、編輯同人のグループはそれぞれに別個だし、編輯方針の細部でもそれぞれのある独自性を発揮・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・ 偉い人の力を捕えて、掌の中で解体し、それをまた組立て、放してやるようなことは、決して出来ない。 ただ、感じ得る者、いつも謙譲であり真面目であり、受け入れるだけの力のある者のみが感じ得るものであるのに、心附いたのである。 かよう・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・ 大戦後、欧州諸国の文学が陥った社会的混乱、自己解体の奥から根気づよく徐々にこの「チボー家の人々」がつくられて行ったということには、深く学ぶべき点があると思う。 宮本百合子 「次が待たれるおくりもの」
出典:青空文庫