森鴎外の「歴史もの」は、大正元年十月の中央公論に「興津彌五右衛門の遺書」が載せられたのが第一作であった。そして、斎藤茂吉氏の解説によると、この一作のかかれた動機は、その年九月十三日明治大帝の御大葬にあたって乃木大将夫妻の殉・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・この日、ラジオの解説の時間は、戦時利得税、財産税というものの正体がつまるところは大衆課税であって、より多くの持てる者が、持たざるものよりも遙に有利に権力によって守られる仕組みにできていることを、確認させたのであった。この課税の方法によると大・・・ 宮本百合子 「女の手帖」
・・・問題をもっている一つの文学作品を紹介するには、そのはじめに客観的な、提灯もちでない解説があっていいのではなかろうか。ローレンスの作品の問題につれて、わたしたちに感じられているのは、ローレンスそのひとの文学のきたなさではない。社会的に未熟であ・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・というのでは、解説者の努力によってのみなにかの新しい文化史的価値がそえられるという程度ではないかと危ぶまれる。 昭和十年代の扱い方は、とくに複雑であろうと予期される。この時期は日本のおそるべきファシズムの時代であった。この時代の後半にジ・・・ 宮本百合子 「「現代日本小説大系」刊行委員会への希望」
・・・十九世紀に大芸術家、科学者、政治家を輩出させた社会の創造的可能性は、その矛盾の深まるにつれてしだいに萎靡して、二十世紀前半は、ほとんどあらゆる分野においてその解説者、末流、傍系的才能しか発芽させえなかった。十九世紀は、その興隆する資本主義社・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・三木清という哲学者は、西田幾多郎の哲学の解説者であり、戦争中は南方に出かけたりしていた。最も進歩的な階級の哲学である唯物弁証法の哲学に対して、日本で一時大流行をした西田哲学というものは一種の観念的哲学であり、自然と社会に対する進歩的な認識を・・・ 宮本百合子 「行為の価値」
・・・いち早く、フランスは頽廃した文化主義で敗れたというような解説者に対して、常識はそれが全部の答えでないことを直感していた。 モーロアの『フランス敗れたり』はこの心持に迎えられて出たのだから、読まれたのは当然だと思う。おそらくあらゆる職業と・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・戦時利得税、財産税についての解説一つでも真面目に聴いたらば、人民は、曖昧な日本的薄笑いを口辺に浮べてはいないと思う。貿易局の頭に三井財閥を坐らせている政府。銀行、大企業が、9/10を所有している戦時公債を、財産税でとりあげた人民の金で償還し・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・分たちの重圧である半封建的なものと闘わなければならないとき、資本主義勢力が民主的進展の推進力であるよりも急速にその歪曲作用を与えているとき、社会主義的リアリズムの課題は、もう一度歴史の手前のところから解説されなければならない、という国際的文・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・石原氏がその学説の解説者として自身を示したアインシュタインのナチから受けた迫害などを実際に見て、果して石原氏の感想はどうであろう。アインシュタイン自身が自分の心持からレーニングラードのアカデミーで働くのなどはいやだというのと、ソ連がもし希望・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
出典:青空文庫