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・・・という一場の訓辞をこころみるかも知れないのだから、人の気持って微妙なものだ。 私だって少しは誇りを持っている。自分の書いた文章が、全く読まれないか、あるいはざっと一読の光栄に浴して、そうして、「なんだいこれは」と顔をしかめられるのをハッ・・・
太宰治
「芸術ぎらい」
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・・・院主の訓辞、かの説教強盗のそれより、少し声やさしく、温顔なるのみ。内容、もとより、底知れぬトリックの沼。しかも直接に、人のいのちを奪うトリック。病院では、死骸など、飼い犬死にたるよりも、さわがず、思わず、噂せず。壁塗り左官のかけ梯子より落ち・・・
太宰治
「HUMAN LOST」