・・・に至り亡人の存命中、戸外に何事を経営して何人に如何なる関係あるや、金銭上の貸借は如何、その約束は如何など、詳細の事実を知らずして、仮令い帳簿を見ても分明ならず、之が為めに様々の行違いを生じて、甚しきは訴訟の沙汰に及ぶことさえ世間に珍らしから・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ 離婚訴訟には、婦人の弁護士がつきます。そして、大抵の場合に婦人が勝訴になります。時には、良人が何等の悪意も蛮行もない場合に於てさえ婦人は訴訟して、勝つ事がございます。 其は何故でございましょう。何故そう云う恐るべき冒涜が人間の魂に・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・刑事訴訟法二一八条二項に――容疑者の身柄を拘束した場合にのみ、強制的に指紋を採ることができる、とある。したがって、指紋と犯罪の容疑とは密着したものである。泡盛によっぱらって、留置場のタタキの上で一晩中あばれていただけの者が、警察にとまったか・・・ 宮本百合子 「指紋」
・・・「さる十月二十七日に石川検事が東京地検の三階の会議室で、検察事務官に対する刑事訴訟法の講義において次の如き三鷹事件に対する検事の方針がのべられている」とその内容を明かにした点である。「これは、裁判は証拠中心主義のものであって、公判において証・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・或る人は、それ程、暖い友情によって結ばれている夫婦が、何故あれ程頻々と、法廷で離婚訴訟を起すか。何故、金持の後とり娘だと云うと多勢の青年がつき纏うか。どうして、血で血を洗う相続争いが頻出するかと詰問されるでしょう。 確に、それは世上の大・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ヒダにはさまれてもがくどの虫も、権力によって発せられた告発状そのものが、訴訟法に反してつくられているという事実をもって、法廷にたたかう決意を示したためしはない。 戦争に反対し、戦争の挑発に抗議する現代人の要求は、ほとんどすべての文学者の・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・更に出版権にからまる絶え間ない訴訟事件があり、代議士立候補のための、進んでは大臣になるための政見を発表し、しかも時々バルザックは一八二五年の破局にもこりず熱病にかかったように大仕掛の企業欲にとりつかれ、サルジニアの銀鉱採掘事業や、或る地勢を・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫