・・・つまりこういうような殺人事件、詐欺とか強盗、そういう事件では社会の責任を指摘するでしょう。しかし、社会問題そのものを解決して行こうとする社会的行動に対する鎮圧とか、抑圧とかいうものについては、やはり分裂したいままでの考え方をもって法律をお使・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・丸の内の宏壮な建物を見てもわかるように、保険会社は富んでいるものだが、現在、生命保険会社の支払い方法は、他殺だと保険金詐欺でない限り普通の病死と同じに全額を支払うことになっているのだそうだ。自殺の場合、契約後一年――三年は全く支払わず、三年・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・二つの監房に二十何人かの男が詰っているがそれらはスリ、かっぱらい、無銭飲食、詐欺、ゆすりなどが主なのだ。 看守は、雑役の働く手先につれて彼方此方しながら、「この一二年、めっきり留置場の客種も下ったなア」と、感慨ありげに云った。・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・一家が詐欺にかかりそうになったとき、それをふせいだ母の機転、娘のかしこさがほめられるなら、人民全体の未来が国際的なおそろしい私慾の鍋にうちこまれようとするとき、それをふせぐ婦人たちの強い発言がどうして無視されていいだろう。わたしたちが望んで・・・ 宮本百合子 「しようがない、だろうか?」
・・・日本の十数万人の旧治安維持法の被害者はもちろん、涜職、詐欺、窃盗、日本の法律によってとりしらべられたすべての人々で、刑事や検事からこの言葉をきかされなかった者はおそらく一人もないだろう。法学博士で大臣だった三土忠造でさえ、一九二九年か三〇年・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・その結果工場の資材を持出して売ること、そういうもののブローカーをすること、盗んだ資材で、例えばラジオを組立てたり、時計を一寸修繕したりして、それで又金を儲けること、窃盗や詐欺が大変に殖え始めた。世間の注目はこのようにして始まった青少年の生活・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫